2012年3月4日日曜日

アートキャンプのアーティストたちについて

「みずさん、おうちにかえるって。」 2 歳になる園児はそう言いながら、洗面台の排水口へ滑り落ちていく水に手を振る。その言葉につられて、そばにいた保育士も一緒に排水口を覗き込んで水を見送る・・・。

手洗いが大好きなこの小さな詩人は、知人が勤める保育園に通っている男の子だ。その男の子の周りには、保育園の日課とよりそうように、小さな物語が綴られていく。
この前も、ゆで卵を剥いて中から顔を出した卵の黄身を見て「お日さまが生まれた。」と嬉しそうに話していたそうだ。

この小さな詩人のように、 私たちがアートキャンプで紹介する作家たちは、この世界を、私たちとは少し違った視点から体験しているのだと思うことがある。彼らが表現しているのは、私たちと無関係な特別な世界ではない。私たちが見過ごしてきた些細な出来事や、どこにでもあるような物がズームアップされて、特別な意味や名前が与えられている世界なのだ。  

たとえば私がバスを利用する時、だれがこのバスを運転しているのかってことは、たいてい意識の対象から外れている。乗車して、運転席の横を通過するわずかな時間の中で、意識は運転手さんをバスの装置の一部みたいに感じている。

しかし、バスを描き続けている狩俣明宏さんにとって大切なのは、バスの車体だけでなく、だれがバスの運転をしているのかであり、運転手の名前、声、身につけているものが全てなのだ。
狩俣さんによって、無名の運転手さんたちがスポットライトを浴びて狩俣さんの作品として、私たちの目の前に立ちあがる。

私たちはアートキャンプの芸術家たちと同じように、この世界を体験することはできない。でも冒頭の保育園の話のなかで、子どもの発見や想像の世界に共感することができた保育士のように、芸術家から発せられたことばや描かれた絵の世界に共振する自らの心の変化を体験することはできる。

アートキャンプの作家たちの作品に向かい、その世界に入っていく時、彼らの作品をいわばのぞき穴のようにして、見慣れた世界を新しい視点で体感する幸運な瞬間に立ち会うことができる。

これこそがアートキャンプの作品の醍醐味なのだと思う。

アートキャンプ展のおさらい①~アートキャンプ2008展+マリオデルクルト展

素朴の大砲~アートキャンプ2008展+マリオ・デルクルト写真展

2008年、新装間もない沖縄県立博物館・美術館で行われた展示会の概要です。

期日:2008年3月4日(火曜日)~3月29日(土曜日)

会場:沖縄県立博物館・美術館(県民ギャラリー・講座室)

主催:沖縄県立博物館・美術館、アートキャンプ2001実行委員会

共催:社会福祉法人若竹福祉会
後援:NHK沖縄放送局、沖縄県社会福祉協議会、沖縄タイムス、琉球新報、琉球放送
助成:おきぎんふるさと振興基金
協賛:医療法人佐久田脳神経外科・外科、株式会社アイ・ティ・ネットシステムズ、琉球警備保障株式会社、沖縄県高等学校障害児学校教職員組合


アートキャンプ2013展開催が決定

2001年、2006年、2008年と過去3回開かれた「アートキャンプ」展が
来年2013年に浦添市美術館にて開催されます。

浦添市美術館の協力の下、2週間の会期での開催に向けて
準備がスタートしました。

これまでに、アートキャンプ展を飾った作家たちの新作のほか
特別支援学校等で創作を続けている新人作家の発掘、
県外作家の紹介の3本柱で
アート好きの皆さんの期待に応える美術展になるよう
準備を進めていきます。

こうご期待!!

2006年、浦添市美術館で紹介された東恩納侑さんの針金機関車